5月7日 千葉県こども病院 ビーズ教室
患者家族への支援
2025.05.09
ビーズ教室「ありがとうの気持ちを込めて 〜大切な人に指輪をプレゼントしよう〜」を開催しました。
日々病気と向き合いながら頑張っている子どもたちが、大切な人への「ありがとう」の気持ちを、自分の手で形にする。 そんな願いが込められたイベントです。
●ありがとうが笑顔に変わる瞬間
まだ自分では作れないおこさまには、ビーズの色を選んでもらったり完成品をプレゼントしてもらうことにしました。
「いつもありがとうってプレゼントするよ〜」と声をかけると、ぱあっと笑顔になり、カメラに向かってピースサインをしてくれました。言葉がなくてもありがとうがあふれていました。
「選ぶ力」にも驚かされました。ビーズを選んでもらったところ、選ぶたびにどんどん色がつながって、気づけば美しいグラデーションに。偶然?それとも直感?と、周囲の大人たちは驚かされました。
苦しい治療を受けながらも「感性」を見せてくれました。
●Aくんの策略
しばらく高熱が続き、体力が落ちていたAくん。 訪問時は横になっていたため「今日は無理せず休んでいても大丈夫だよ」と私はそっと思っていました。
実はAくん、事前に「ビーズ教室で作る指輪、誰にあげるの?」と聞かれると、ずっと「自分の」と答えていました。
でもその裏で、彼はずっと静かに準備をしていたのです。
体調がすぐれないなか、Aくんはゆっくりと起き上がり、一粒一粒、丁寧にビーズを通していきました。
そして完成した指輪を、お母さんに「はい、これ」と差し出したのです。
「ええええー!」と驚く私たち。
そう、Aくんはお母さんを驚かせたくて、あえて「自分用」と言っていたのでした。
お部屋じゅうが笑顔と「ありがとう」で満たされた、心あたたまるひとときでした。
●声をそろえて、励まし合って
「みんなで一緒に作りたい!」という声に応え、6時間目まで授業がある子を待って、食堂に集まりました。
それぞれの授業を終えたこどもたちは、自分たちでビーズのレシピ本を声をそろえて読みながら、指輪づくりに挑戦。
「次、このビーズだって!」「こんな小さいの~?」と笑い合いながら、ビーズをテグスに通していきます。
テグスを何度も通すうちに難易度はどんどんアップ。表情は真剣そのものに。「目が~!穴が見えない~!」と叫びつつも「でも絶対通すよ!」とお互いを励まし合っていました。
誰かがそばにいて、笑い合ったり、ちょっと競い合ったりできる、そんな貴重な時間になりました。
完成した指輪には「この瞬間を生きる力」や「誰かのために何かをしたい」という、こどもたちの思いがたっぷり込められていました。
誰かを想う時間は、同時に、自分自身を支える時間でもあるのだと感じさせてくれました。
小児がんの経験は、日常を非日常に変えてしまうものです。病気が教えてくれることは、あまりにも重く、つらいものが多いです。でも、そのなかで見つけた楽しさや笑顔の記憶が、これからの日々を少しでも照らしてくれるといいなと思います。
当日ご協力いただいた病棟のみなさま、保護者の皆さまに心より感謝申し上げます。
(文責 中村)