2019年10月23日~26日 SIOP2019に参加しました

講演・社会啓発

2019.10.23

  • 2019年10月23日~26日 SIOP2019に参加しました
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今年もSIOP(国際小児がん学会)に参加しました。毎年、学会参加の前にその地域にある小児がん治療施設を訪問し、いろいろ勉強させてもらっています。今年はベルギーの2施設、そして学会開催地フランスの1施設でした。
 毎回、感じるのは、施設の印象が明るい・広い・オープンということです。病棟も病室も広く、全体の雰囲気が明るいのです。そして特別な場所ではなく、治療を受けている、そのために入院が必要だけれど普段の生活にできるだけ近い環境を作っているという印象です。今回も同様でしたが、一つ驚いたのは、いわゆる無菌室(無菌棟)にまで、私たち見学者が入室できたことです。勿論、手洗いは厳重でしたが、ガウンやマスクもなく、本当に大丈夫?と私たちは瞬間、戸惑いながらも、「だいじょうぶ!だいじょうぶ!」というスタッフの声に押されて入室しました。ただ、無菌室に入るために手洗いをする部屋と無菌室のドアの開閉が工夫されていました。手洗い用の部屋へのドアが完全に閉まらないと、無菌室へのドアは開かず、反対に無菌室のドアは人が出るとすぐに閉じられるのは勿論、その時に手洗い室へのドアが開いていると無菌室のドアは開かないのです。無菌室の中に個室がいくつかあるために、外部から人が入ってきても、このような二重のドアの仕組みで感染は防ぐことができるということなのでしょう。でも、私たちを案内してくださったスタッフは、個室のドアを無造作に開けて、「どう?調子は?今、日本から来た方々を案内してるの。」と笑顔でその患児を紹介してくれました。
 長期フォローアップや在宅ケアについてもレクチャーを受けてきました。入院中も同様でしたが、基本的に自立的な闘病を促す環境が整っているという印象でした。要するに診断時から家族も患児も病気について詳しく学び、将来の問題についても学んでいるのです。隠し事は一切ありません。ただ、もう治癒の見込みがない患児に対しては死という言葉は使わないにしても、これからの毎日をどうやって過ごそうか、どうしたいかをスタッフや家族がしっかり本人に聞き、それを理解し協力する体制がとられていました。そのために在宅ケアが充実しており、それには多くのボランティアが関わっていることも知りました。ボランティアは必ずしも医療者としての資格を持っているとは限らず、研修を受け、適格であると認められた人たちです。彼らが言うには親として、仲間として、医療者よりも家族や本人の気持ちがより深く理解できるからだそうです。ただ必ずナースなど医療者もその中に加わっているので、医療的な視点でのケアもできています。
 病院の中でも子どもたちがどうやって明るく入院生活を過ごすことができるか、そのために多くのボランティアが関わっていました。ミルフィーユのような団体がしっかり介入していて、資金を集め、様々な企画を催し、病院内に活動のための部屋も設けていました。事務室と、子どもたちが絵を描いたり工作したり、運動したりする部屋です。ボランティアのモチベーション、そして支援活動に対する社会的理解の高さが感じられました。
 学会では当法人が2年前よりドクターのお力を借りて行ってきたCCSに関する研究結果の一部をポスター発表しました。最近ではポスター発表(口演ではなくてポスター形式での発表)も電子化されEポスターとなっています。その場合、研究者当人はその場にいることなく、閲覧者が関心のあるポスターを自分で選択してみるということになりますが、従来通りのポスター発表ですと、会期中、ずっとポスターが開示され、指定の時間に研究者がポスターのそばにいて質問を受けることができます。ですが、これには数の制限があり、会議開催前の審査で選ばれたものだけになります。そのような条件下、当法人の理事の寺田和樹先生、それから副理事長の小川純子先生作成によるポスター(入院中から使用できる運動アプリ)が選ばれ、大勢の閲覧者がきてくださいました。寺田先生の発表内容は会報誌に掲載してありますので、まだお読みになってない方はぜひお読みください。会報誌は原則として会員と支援者のみにお送りしておりますが、関心をお持ちの方はミルフィーユのホームページからメールでご連絡ください。数に限りがありますので、必ずしもお送りできるとはお約束できませんが…。(文責 井上)