2012年6月17日 アメリカ・テキサス州 テキサスこども病院訪問

講演・社会啓発

2012.06.17

  • 2012年6月17日 アメリカ・テキサス州 テキサスこども病院訪問

アメリカ、テキサス州にあるテキサスこども病院を訪問しました。
目的は小児がんの治療を終えた小児がん経験者のための長期フォローアップ外来の見学です。
小児がんは治る時代となり、特に小児に多い急性リンパ性白血病は治癒率が90%を超えるようになりました。立派に成長した若者たちがどんどん社会に出て行くようになり、これからの社会を担っていく世代の大事な一員となっています。本当に喜ばしいことですが、ただ、手放しに喜んではいられないこともあります。

一口に「小児がん」と言っても100以上の種類があり、それぞれ、治療や問題点も違います。
治療を終了したら、それでおしまいというのであれば問題はないのですが、中には「がん」を死滅させるために非常に強い治療手段をとらなければならない場合があります。この場合、悪性の腫瘍細胞だけでなく、正常な細胞や臓器にまで影響が及び、それがいったい何時、そしてどのような影響となって現れるのか未だ不明であったり、個人差があるため、必ず問題が発症するかどうかも明確ではないということもあります。そのために、治療が終了した後も、経過観察と定期的な検査を行う長期フォローアップが必要で、これによって問題を早期に発見し対処し、より良い将来へとつなげなければなりません。

日本でも現在、この長期フォローアップ体制を確立しようとさまざまな研究や試みがなされていますが、テキサスこども病院では、これがすでに長期フォローアップ外来として実施され、小児がん経験者がフォローアップ外来を受診していました。どんな様子だったかいくつかご紹介します。

日本では、ある程度の年齢になると本人だけが受診しているようですが、テキサスこども病院では18歳になるまでは必ず親や保護者と一緒に受診することが約束となっています。
理由は
1. 本人だけでなく、家族が本人の現況をどうとらえているか確認する
2. 家族全体の様子(経済・両親の関係・親子関係・きょうだいの様子)をできるだけ把握し、それを基に本人の現況を理解する
3. 検査やその内容、医師の指示に対する親子間の反応の違いを見極め、両者が納得できる説明、指導を行う
コーディネーターによって、次回受信日を各小児がん経験者・家族にE-メールや手紙で知らせ、フォローアップ受診のドロップアウトがないよう努めている。
医師による診察の後は必ずソーシャルワーカーとの面談があり、進学や就職、そのほか社会的な相談をする。

日本では「がん」に対する社会的な理解が進んでないと感じることが多く、そのために治療が終了し、ある程度、体調や生活が安定してくると、周囲に「がん経験者」であることを伏せたいという気持ちも働き、その後の検査を受けに行かなくなる小児がん経験者が少なくありません。
そのまま、何事もなく過ごしていくのであれば、それでいいのですが、受けた治療によっては何か問題が発症するリスクがあり、それを予防し、発症しても早期に発見し解決するか否かでは、その人の生涯に大きな違いが出てくるでしょう。そのために長期フォローアップ体制が日本でも一日も早く確立されることを願ってやみません。