2011年11月26日 日本小児がん学会 出席

講演・社会啓発

2011.11.26

今年も「日本小児がん学会」に出席しました。今年はJPLSG長期フォローアップ委員会によるシンポジウムで口演もさせていただきました。



演題は「日本語版長期フォローアップガイドラインに期待するもの家族として支援者として」です。小児がんの治癒率は、がんの種類によって異なりますが、70%~80%となりました。治療方法があまりなかった30年前を思い起こすと夢のようです。あの頃は放射線治療といくつかの化学療法薬剤しかなく、医療技術も今とは雲泥の差でした。しかし今では多くの子どもたちが元気に退院し、元の生活に戻っていくことができるようになった・・・。すごいことです。このようにまで治癒率を上げてくださった小児腫瘍研究者や臨床医の方々、そしてそのほか多くの方々の夜も日もないご努力に感謝するばかりです。
そして現在では、治療の長期的な影響に関する研究も進み始めました。治るようになったと言っても小児がん治療はやはりかなり強い治療です。成人と違って、成長過程にある子どもたちへの治療ですので、その影響は成人よりも多種多様な問題となって現れることがあります。治療を終えた人たちのすべてに起こるのではありませんが、中には内分泌系への問題が起きたり、治療が原因で再びがんを発症する(二次がん)リスクが高まる場合もあります。こういった問題を解決するために、まず、どのような問題があるのか、そして問題が生じた場合、どのような対応ができるのかなど医師向けのフォローアップガイドライン作成が現在、進行中です。シンポジウムではそのガイドラインに家族として、支援者としてどんなことを期待するかについてお話しさせていただきました。この夏、出版された「よくわかるシリーズ:小児がん経験者のために~よりよい生活の質(QOL)を求めて」とアメリカのCOG長期フォローアップガイドラインの付録になっている「Health Link」 の紹介と感想も併せてお話ししました。これらは小児がん経験者・家族にとってとても有用なもので、前者は長期フォローアップの必要性から始まり、疾患別、さらに臓器別にどのような晩期合併症(治療による長期的な影響)が考えられるか、それを予防・発症リスクの軽減するためにどのような検査が必要かなど詳細に解説されています。治癒後の人生を少しでも明るいものにするためには絶対に知っておかなければならない情報がぎっしりと詰まっています。そして「Health Link」も同じ目的で作成されていますが、これはインターネットからダウンロードできるシステムになっているので、必要な部分だけをプリントアウトできるものです。解説も非常にわかりやすく、簡単にまとめられ、小児がん経験者・家族の気持ちを配慮した表現になっていますので、先のことなど知りたくないと目を覆っている方々にも受け入れやすいと感じます。せっかく私たちに役立つ情報があっても、そして晩期合併症と言われる“がん治療の長期的な影響”についてよく理解しておかなければならないことは分かっていても、目に見えない敵がまだこの先にいるのかもしれないと感じる恐怖感ゆえに、目を閉じ、耳も塞いでしまっている小児がん経験者・家族が少なからずいるということ、このことを医療者の方々に理解していただきたいと訴えました。そして医師の方々には晩期合併症の説明をされる際、できる限り恐怖感をもたないような、そして前向きに現実を知ろうとする意欲を持てるような表現に留意することを医師向けガイドラインにかきそえしてほしいとお願しました。そうすれば小児がん経験者・家族が自分の抱えるリスクを直視し、フォローアップ受診に対して後ろ向きにならなくなると思うからです。医療者でもない一小児がん経験者の家族にすぎない私の話を真剣に聞いてくださった医師や看護師の皆さんから、口演後、質問や励ましの言葉をいくつかいただきました。家族の声を真摯に受け止めてくださった証です。そのことに、私は逆に感謝し、小児がんになっても、こんなに多くの方々が誠心誠意、応援してくださっているということを実感し、心の中に温かいものが流れた時間でした。